2007年5月22日火曜日

「シリウスの道」


「余人にはわかりゃしない世界だよ。」
「こ」様に言われて本を読むハメになってしまった。いや読みたい本と出会わされてしまった。『孤独なおとこの悲哀と憂愁と含羞をたっぷりと』という「こ」様からのメールは、その作家の死を伝えるものだった。その作家の著作は一冊しか知らなかった。しかもそのタイトルに全く興味が湧かなかった。突然の「こ」様のメールの文面は、一も二もなく僕を本屋に走らせた。それほど魅力的だった。もし小説書くんだったらこのテーマ描きたい。と思ってたストーリーがそこにあった。筆の運び、展開、会話、舌打ちしてしまった。同時に記憶をこんなにもリアルに呼び戻してくれる小説も珍しい。

脳みそがあらゆる具象を理解できなかったら生き残れない世界(それは濁だろう)なのに、表現ではここまで?と言う位突き詰めないと生まれない世界(それは清だろう)が確かに存在する世界を見事に描いてる。広告屋はこんなにも悲しいんだ。最後の虚無感がまた見事だね。余韻をたたえた終わりがまたいいね。こんなに一気に読んでしまうのは、久しくなかったね。

1+1を3にも4にもする妙。
またマイナスする意。
幻想を客観に見せる即。
無を有に見せる答。
すべてがたぎる、ほとばしる。熱に浮かされたような作業。広告屋の芸当をまぁよく見せてくれてます。好きな世界を作品に昇華させる構成と筆力と太い骨格に、失われたダイナミズムを感じてしまった。考えてみれば今は皆が凡庸になっているのかも。
やがて最後に、広告屋には著作権ひとつもたらされない。悲哀・・・憂愁・・・含羞・・・。その事に気づくのか、わざと気づかないのか、あ、いつの間にか自分に全く重なってしまった。う〜ん、僕は当分打ちのめされそうだ。「こ」様には読む順番まで教わったぞ。さてどこへ行くんだろう。素晴らしい作家を教えてくれた「こ」様よ。もっと色々教えておくれ。

きっと続きを書きたくなるかも。

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