2007年8月15日水曜日

太陽がいっぱい


くつろぐ僕へウエイトレスが声をかけた。「ご気分はどうですか?」
僕は答える。「太陽がいっぱい。最高の気分さ。酒をくれ。」

じりじりと焼きつける太陽。
あの夏の日がなかったらきっとここには来なかった。
美しさと不条理を感じたくてここへ来てしまった。
「最高の気分さ。酒をくれ。」



(以下は映画書評から)
ニーノロータの切ない旋律。秀逸なフィルムワーク。そしてカメラワーク。
アランドロンを不気味な魚や天秤などの被写体と一体化させ、ニーノ・ロータのメロディと相まって、深層心理を比喩。
ルネクレマンは、空間を変えずに、時間だけをジャンプさせたりもしているが、これが自然なので流れを乱しておらず、ヌーベルバーグの極端なジャンプカットよりも興味深い。

ドカエのカメラワークもまた素晴らしく、斬新で巧妙な構図も多数見受けられる。
面白いのが、前景と後景でそれぞれ異なるシチュエーションを同時に見せるテクニック。
前景では男と女がいちゃついていて、後景では内気に何もしないでいるアランドロンの表情を捉える。

観客の感情を振るわせて見事である。

 ロー・アングルも多用して、カメラをわざと壁に近付けて奥行きを出す演出も素晴らしいが、撮らなくてもストーリーに支障をきたさないようなものなら撮ってないことにも注目してもらいたい。
例えば殺人シーンではナイフを刺す瞬間は撮らずに、ナイフのアップショットだけで迫力の映像に仕上げているし、殺した男を運ぶシーンでは足しか撮っていない。構図だけでもサスペンスを盛り上げているのだから頭が下がる。

ラストのパラソルの構図も印象的である。最高の気分でくつろいでいるアランドロンを、素直にカメラは捉えてはいない。

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